半月板損傷とは?
半月板損傷は膝において比較的多く発生するスポーツ外傷の1つです。多くはスポーツ中の外力や繰り返し動作よるストレスによって起こりますが、加齢によって半月板が変性し引き起こされる場合もあります。
半月板とその役割
半月板は簡単に言うとクッションのような役割を果たしており、膝へのストレスに対して上手く荷重を分散させることで膝の関節軟骨への負担を軽減します。また膝関節の適合性を高め関節のスムーズな動きを助けたり、膝関節の安定性にも大きく関与している為、膝関節において非常に重要な働きを担っています。
半月板とは膝関節を構成している大腿骨と脛骨の間に存在するコラーゲン繊維に富んだ軟骨組織です。外側半月板と内側半月板に分けられ、内側と外側でそれぞれ形状や大きさが異なります。内側半月板はアルファベットのCの形、外側半月板はOに近い形状をしており、内側半月板は外側半月板に比べて空間が広く面積も大きいです。また場所によって厚みも異なり、半月板の外縁は厚く、中央に向かっていくにつれて薄くなっていきます。
膝関節を覆っている関節包という膜状の組織の内側に付着しており、外側の縁は血流、内側の縁は関節液からそれぞれ栄養の供給を受けています。
半月板損傷の原因
〇スポーツ中に起こる原因
スポーツ中に起こる原因としては大きく2つ挙げられます。1つは膝の外側から大きな外力が加わった際です。ラグビーや柔道などのコンタクトスポーツにおいて好発し、多くの場合は外側半月板を損傷します。2つ目は膝が曲がった状態で捻りが加わった際です。ジャンプの着地や急な方向転換など様々なスポーツ動作において起こり得ます。その他にも繰り返しの負荷によって半月板損傷を引き起こす場合もあり、水泳の平泳ぎの動作や陸上の長距離などが代表例として挙げられます。
好発するスポーツ
- サッカー
- ラグビー
- 柔道
- 野球
- バスケットボール
- バレーボール
- テニス
- スキー
- 水泳
- 体操
〇スポーツ以外において起こる原因
➊ 靭帯損傷などの既往、筋力低下
膝関節の安定性には半月板だけではなく靭帯や筋肉も関与します。もともと靭帯損傷などの既往があったり、大腿四頭筋の筋力低下がある場合、膝関節や半月板にかかる負荷も大きくなり傷つきやすくなります。
❷ 加齢による半月板の変性
ヒトの身体は加齢共に体内の水分量が徐々に減少していき、その結果半月板や腱・靭帯などの軟部組織においても柔軟性が失われてパサパサになってしまいます。これを「変性」と呼び、変性が起こると日常的な動きによって半月板が傷つきやすくなってしまうのです。
❸ 円板状半月
これは日本人を含めアジアの人に多くみられる先天性の特徴になります。日本人では約7%にみられ、ほとんどが外側半月板です。画像のように本来の半月板は中央にスペースがありますが、円板状半月の場合は中心部まで覆われてしまっています。本来は中心部にかけて厚みが少なくなっていることでうまく荷重の分散をすることが出来ているのですが、円板状半月の場合中心部まで厚みがある為うまく分散機能が働きません。また大腿骨に挟みこまれてしまうことも多く通常よりも半月板が傷つきやすくなってしまいます。
【ニーイントゥーアウト・ニーアウトトゥーイン】
ニーイントゥーアウト(写真左)はX脚とも呼ばれ、膝を曲げた際に膝が足部よりも内側に入ってしまう状態のことです。この場合外側の半月板にストレスが加わります。また前十字靭帯や内側側副靭帯も損傷しやすい環境なので注意が必要です。
ニーアウトトゥーイン(写真右)はO脚とも呼ばれ、膝を曲げる動きで膝が足部よりも外側に開いてしまう状態のことです。この場合は内側の半月板にストレスが加わります。
半月板損傷の症状
急性期の症状
スポーツ中など1回の外力によって受傷した直後、つまり急性期は主に痛みが主症状となります。また痛みと共に膝を曲げ伸ばしした際にキャッチングと呼ばれる引っかかり感、全く曲げ伸ばしが出来なくなってしまうロッキングという症状を引き起こすこともあります。その場合激痛と可動域制限を伴い歩行が出来なくなってしまうケースも見られます。
慢性期の症状
慢性化すると関節内で炎症を引き起こし、水腫や血腫(膝に水や血が溜まってしまう)が出現します。さらにそのままの状態で生活していると関節軟骨の損傷や将来的には変形性膝関節症の原因となってしまうこともあります。しかし、下記のアンケートの様にMRIで半月板が損傷しており、2ヶ月間痛みが改善しない少年も一度の治療で痛みから解放されて走れる症例もあります。これは、痛みの原因が半月板ではなかったという方です。
MRIで半月板損傷が確認された膝の痛み
半月板損傷の検査法
ベッドに仰向けになった状態で膝を曲げ伸ばししてもらい、可動域制限・痛み・引っかかり感がないか確認していきます。膝を曲げて痛い場合は半月板後方の損傷、伸ばして痛い場合は半月板前方の損傷がそれぞれ疑われます。軽度な損傷の場合、膝の曲げ伸ばしでは痛くないケースもあるため、以下の検査法でより詳しく調べていきます。
➊ マクマレーテスト
❷ アプレーテスト
半月板は自然治癒するのか?
体内で組織の修復が行われるためには、必ず血流(血行)が必要となります。なので関節軟骨など血管が分布しないような組織は一度傷つくと自然に修復・治癒することはありません。筋肉の損傷に比べて腱や靭帯の損傷の方が治りにくいとされているのも血流に乏しいからと言われています。半月板には血行のある箇所と全くない箇所が存在します。半月板の周囲部1/3は血管が部分的に走行していますが、それより中心部になると血管が存在しません。つまり前者は自然治癒する可能性がありますが、後者の場合自然治癒は望めません。しかし近年は再生医療の発達により、膝の幹細胞という細胞を培養することで半月板や関節軟骨などの修復・再生を行う治療法も確立されつつあります。
痛みの原因は半月板ではない?
一般的には半月板損傷は半月板が直接痛みを引き起こしていると思われています。しかし実は半月板には神経があまり通っていません。半月板損傷によって出現する痛みは関節包と滑膜という膝関節を覆ている組織で感じているものであり、半月板自体が痛みを出しているわけではないのです。半月板の断裂面(ささくれのようなイメージ)や軟骨のかけら・すり減った関節面が関節包・滑膜に触れたり、損傷によって半月板の不安定性で付着している関節包に張力が加わることで炎症や痛みを引き起こします。
つまり関節内の炎症や痛み物質を取り除き、大腿骨と脛骨の動きを正常化することで痛みが改善する可能性があります。
※靭帯損傷を合併している場合、靭帯の損傷部によって痛みが生じていることもあります。
半月板損傷の治療法
半月板損傷の治療はほとんどが保存療法で行われます。しかし強い痛みが続いていたり、ロッキングや半月板損傷を繰り返している場合には手術を行うこともあります。また半月板には前述の通り、血流のある個所とない箇所があるため損傷・断裂している場所によっても治療法が異なります。
➊ 保存療法
- 包帯固定
- サポーター
- テーピング
- アイシング
- 電気治療
- 温熱療法
- 運動療法
- ヒアルロン酸注射
❷ 手術療法
手術法は関節鏡を用いた切除術と縫合術が挙げられます。以前は切除術が主に行われていましたが、クッションの役割を果たしている半月板を取り除いてしまうことで時間の経過と共に関節軟骨が痛んでしまうことから、現在は温存することを目的とした方法が多く用いられています。切除術を行う場合も全切除は避け最小限の範囲の切除に留めることが好ましいです。
- 半月板切除術
半月板において損傷や断裂してしまっている部分や関節包内を刺激し痛みを誘発している部分を取り除く方法です。切除した部分は再生することがないため、関節軟骨へのストレスが増加し、将来的に変形性膝関節症に繋がってしまう可能性があります。
昔は全切除(全摘出)も行われていましたが現在は上記のリスクもあるためほとんど行われていません。
- 半月板縫合術
半月板の断裂部を縫合することで半月板の修復を促す方法です。半月板を取り除かずに温存することが出来るので、機能を保ちながら関節軟骨への負担を抑えることが出来ます。しかし断裂部が半月板の外縁で血流のある場所に限られ、自然にくっつくかどうかには個人差もあるため、縫合したからといって必ず元通りになるとは言えません。
当院での治療法
その痛みの原因が半月板損傷による痛みなのかどうかがとても重要です。レントゲン検査で半月板の損傷と診断および疑いを診断された場合では、早期に痛みが改善するケースも多くあります。完全に半月板が損傷しており、血腫も見られる場合、靭帯にも損傷が見られる場合には歩行及び日常生活まで少しお時間を要するかもしれません。しかし、運動を激しくされている、今後もバリバリ運動をしていく方を除いては、保存療法が望ましいと考えます。手術をしない決断をされた方は、膝関節内・膝関節外に血腫が残らない様に治療をしていく。これがその後の予後に繋がると言っても過言ではないでしょう。
❶ 特殊治療器/立体動態波/3D微弱電流/超音波/ハイボルテージ
トップアスリートも使用している治療器を使い、痛みの緩和、炎症・腫脹の抑制、組織の回復促進を図ります。それぞれのモードを組み合わせる事で段階に合った治療を行うことが可能です。
❷ 筋膜リリース
お怪我をされた部位は、必ず組織の癒着が起こります。この癒着を取り除いていく、筋肉・筋膜の滑走を良くする事はとても重要です。これだけでも膝の曲げ伸ばしに苦労をされていた方に改善が見られるケースが多いです。
❸ 関節・バランス調整
痛みを引き起こしている関節の不安定、つまり大腿骨と脛骨の動きを調整していきます。左右のバランスや関節可動域の低下が損傷の要因となっている場合、そこに対しても調整を行うことで再発予防や他の二次的なケガの予防にもなります。
❹ 運動指導・動作改善
半月板損傷による筋力低下や動作不良に対しても1人1人症状に合わせたプログラムを作り指導していきます。競技復帰を希望されている場合はその競技特性を踏まえたうえで行っていきます。
膝の半月板損傷でお困りの方は【横浜駅徒歩12分:なる.整骨院】へご相談ください。
神奈川県横浜市西区浅間町2-101-4