踵部脂肪褥(しょうぶしぼうじょく)/ファットパッド症候群

現代では、踵の痛みに悩まされている方は意外と多くいらっしゃいます。その中でも踵のクッションの部分に痛みを感じる事の一つに踵部脂肪褥があります。踵の痛みには様々な原因がありますが、踵部脂肪褥の類似疾患として挙げられるのがファットパッド症候群です。またその他の踵の痛みの原因については下記の【参考】ページをご覧下さい。

  1. 足底筋膜炎
  2. 踵骨下滑液包炎
  3. 踵骨後部滑液包炎・アキレス腱皮下滑液包炎
  4. セーバー病(踵骨骨端症)

【参考】踵の痛み・足底筋膜炎その他考えられる原因

病態

踵には脂肪体というハチの巣構造の組織が存在し、衝撃に対してクッションの役割を果たしています。しかし、この脂肪体が硬くなってきたり、左右に広がって薄くなってしまうことで弾力性が失われてしまいます。その結果、踵骨に直接衝撃が加わることで痛みを生じてしまうのが踵部脂肪部褥です。

それに対してファットパッド症候群の場合、繰り返しの衝撃などによって脂肪体と踵骨の間でズレ(剪断力)が起こり痛みが生じます。

それぞれ踵部脂肪褥は中高年に多く、ファットパッド症候群は比較的若い方やスポーツ初心者の方に多くみられます。

症状

踵部脂肪褥

基本的に踵部脂肪褥は画像のように踵骨隆起(の部分)に痛みを生じます。また固い地面の上や裸足で歩いてしまうと痛みが増加し、触ると踵骨ピンポイントに圧痛が認められます。その際、通常より弾力性に欠けていることが分かり、踵骨がすぐ触れられてしまう点も特徴です。

見た目上の違いとしては、踵の形状が挙げられます。踵を後ろから見た際に、通常は丸みがあるのに対して踵部脂肪褥は四角く見えてしまいます。これは脂肪体が左右に分散してしまっている為に認められる所見です。また踵が拡がってしまうことで、踵の左右両側が靴の中で当たってしまいマメが出来てしまうケースもあるようです。

ファットパッド症候群

ファットパッド症候群も荷重をした際に痛みが生じ、固い地面や裸足で歩くと痛みが強くなるという点では踵部脂肪褥と同じです。しかし痛みを感じる範囲に少しだけ違いがあります。踵部脂肪褥の場合上記のように踵骨隆起ピンポイントに痛みを感じますが、ファットパッド症候群の場合は踵全体に痛みを感じるのです。これは踵骨と脂肪体のズレというファットパッド症候群のメカニズムが関係しています。脂肪体は踵骨の下部を全体的に覆っているため、ズレは点ではなく面で起こります。その為、ファットパッド症候群の場合、踵全体に痛みを感じるのです。

原因

  • 繰り返しの衝撃(オーバーユース)
  • 姿勢による影響(後方重心)

踵部脂肪褥もファットパッド症候群も基本的には繰り返しの踵への負荷が大きな原因です。踵重心(後方重心)の方は通常よりも踵に負荷がかかってしまう為、より発症のリスクが高まります。

しかしこの2つ以外にもそれぞれ異なる原因があるケースもあります。踵部脂肪褥の場合、中高年の方に好発しますが、これは脂肪体の変性が関係しています。変性とは加齢と共に身体の水分量が減少し、結果として組織がパサパサになってしまうことです。変性を起こすと組織が脆くなり柔軟性も低下してしまう為、痛みを生じやすくなります。またリウマチや感染症が原因となる場合もあります。

ファットパッド症候群の場合は運動時のシューズによる影響が多く、特にシューズを新しい物に変えた際に注意が必要です。踵のソールが薄いなどクッション性に乏しいシューズはあまりお勧めしません。それ以外にも明らかに足にシューズが合っていない場合は、早めにしっかりと合うシューズに変えた方が安心でしょう。

治療法

➊ 荷重の免荷

まずは踵に掛かる負荷を軽減(免荷)する必要があります。当院では『ジェルヒールカップ』というクッション材をお使いのシューズに入れてもらうことで免荷を行っています。またテーピングを用いて脂肪体を中心部に集めることで痛みを軽減することも効果的です。

❷ 姿勢・バランスの改善

踵の脂肪体が硬くなったり薄くなってしまうのは、姿勢や左右バランスも関係しています。一番分かりやすい例は猫背の方です。このように姿勢不良によって重心が踵重心になることで、通常よりも踵へ加わるストレスが大きくなってしまいます。

また踵に痛みを訴えている方の大半が片側のみ症状が生じています(※両側のケースもございます)。これは骨盤の歪みなどによって左右のバランスが崩れている証拠です。この左右のアンバランスは決して急にできたものではなく、ほとんどが日常生活や癖などによって徐々に形成されています。

これら姿勢・バランスの問題を改善しないと患部の状態が良くなっても、時間の経過と共にまた発症してしまうリスクが高まってしまうのです。

❸ 炎症の抑制/発痛物質の除去

踵に炎症反応(熱感・発赤・腫脹など)がある場合には、治療機を用いて炎症の抑制を図ります。ただ慢性化しているケースの場合は炎症が起こっているというよりは、残存している発痛物質に対してアプローチしていく為、患部の状態によって治療器やモード・出力は使い分けていきます。

【参考】立体動態波/超音波/3D微弱電流/ハイボルテージ/定電流治療器

❹ 生活指導

踵の痛みの場合、日常生活で常に負荷が掛かることが大きな問題となります。より早い改善を得るためには免荷をするのももちろんですが、患者様ご本人にも生活上で意識してもらわなければいけません。発症した経緯や生活リズムは個々で異なる為、当然その方その方で注意してもらう点も異なります。当院では院内の治療以外に生活指導やセルフケアを必ずお伝えしております。下記の3つの項目は必ずお伝えしている生活指導です。

⑴ ランニングなど踵に繰り返しの負荷が加わる運動は控えていただきます。痛みのある状態でこれらの運動を行ってしまうと、患部が悪化・改善を遅らせる可能性や二次的に他の障害に繋がってしまう可能性があるからです。

 

⑵ アルコールや過剰な糖質の摂取は控えて下さい。アルコールの分解や糖質の代謝に水・酵素・ビタミンなどが必要とされますが、これらは組織の修復にも必要なのです。その為、痛みがある状態でお酒を飲み過ぎたり甘いものを食べ過ぎてしまうと、治りを遅らせたり痛みを増加してしまう可能性があります。

 

⑶ お水をたくさん飲みましょう(2~2.5リットル)。基本的にはアルコール・コーヒーは除きます。お茶も悪くはないですが、お身体の事を考えるとお水が1番好ましいです。踵や足先は血流が乏しく老廃物が貯留しやすい環境です。それら老廃物をしっかりと流していくには、お水をたくさん飲んで体内の循環サイクルを高めなくてはいけません。また筋肉や腱など軟部組織にとっても水分は非常に重要で、水分量が減少してしまうとパサパサとした質感に変わってしまい柔軟性が低下を引き起こします。

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