石灰(カルシウム)沈着による肩の痛み
肩の痛みといっても原因は様々です。ひとえに【四十肩・五十肩】ではありません。その中の一つ石灰沈着症について今回は、ご説明してきます。
石灰沈着とは?
肩関節内に石灰(カルシウム)が沈着し炎症を起こすと言われている症状です。この石灰(カルシウム)が関節内で周囲の軟部組織に悪さをする影響で痛みます。特徴としては、夜間・就寝中も疼痛(動かしてもいないのに痛む=自発痛)で眠れない程の症状が挙げられます。
なぜ?石灰(カルシウム)が溜まるのか?
人間の身体に必要なカルシウム。この必要以上のカルシウムは体外に排出されなければいけません。しかし、体外に排出しきれなかったカルシウムが関節や靭帯・血管内に貯留してしまいます。また、組織の酸素分圧低下により腱の線維軟骨への変性が起こりその周囲が石灰化するとも言われています。上記にも説明しましたが、カルシウムが沈着しただけでは痛みを引き起こす原因とはなりません。必要以上のカルシウムは体内で異物と見なされ、自己免疫細胞が攻撃することによって炎症が起こり痛みを発生します。
レントゲンでわかる石灰(カルシウム)沈着
この石灰(カルシウム)は、レントゲンで診断が可能です。一般的に肩の痛みでレントゲン撮影をしても骨に問題はないと診断されがちですが中にはこの石灰(カルシウム)を診断してくれる先生もいらっしゃいます。もし余裕があれば先生に石灰沈着はありませんか?と聞いてみることをおすすめします。
症状
1 夜間痛
まずはこの夜間痛。寝ていても眠れない程痛いです。眠れても1・2時間後には痛みで目覚めてしまいとても不愉快です。睡眠不足によりその他他の症状を来してしまう可能性も大きいです。
【参考】夜間も痛む肩の痛み
2 肩を動かすと痛い
関節内に貯留した石灰(カルシウム)が肩を動かしたときに邪魔をし、痛みを生じます。四十肩・五十肩と間違えられやすいの症状です。その他症状については、【参考】をご覧ください。
【参考】四十肩・五十肩の原因・解説
治療法
1 胃薬・ガスター(ファモチジン)
近年、このガスターに石灰(カルシウム)が沈着するのを抑制する作用があると報告されています。胃酸の分泌を抑えるH2ブロッカーが有効であり服用して2~3週間で肩の痛みがなくなったという患者さんも当院でも少なくありません(当院では処方は出来ません)。もしあなたが石灰沈着を診断された際には、先生にガスターを処方してもらえないか?と聞いてみましょう。
ガスターとは?
効能又は効果/用法及び用量
- 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、上部消化管出血(消化性潰瘍、急性ストレス潰瘍、出血性胃炎による)、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群
- 通常成人にはファモチジンとして1回20mgを1日2回(朝食後、夕食後または就寝前)経口投与する。また、1回40mgを1日1回(就寝前)経口投与することもできる。
なお、年齢・症状により適宜増減する。ただし、上部消化管出血の場合には通常注射剤で治療を開始し、内服可能になった後は経口投与に切りかえる。
2 保存療法
運動療法・リハビリによりこの石灰(カルシウム)が代謝を促します。急性期(痛みが強い時期)は、過度に動かしてはいけません。時期をみて運動療法を取り入れて行くことが大事です。当院では、炎症を抑制する治療器(3DMENS・3D微弱電流・定電流治療器AAP)を使用し積極的に疼痛抑制治療を行っていきます。夜間痛には、特に定電流治療器AAPが有効です。3回ほどの治療で改善されるケースが多いです。急性期はアイシングをするかどうか迷うところですが、当院では中長期的は未来を見据え、アイシングはしません。アイシングはもはやまやかしです。欧米では足の捻挫でもアイシングをしない風潮となってきています。
3 外科的治療・注射・薬物投与
外科的にこの石灰(カルシウム)を取り除く方法か注射にて吸いだす方法。または、ブロック注射が選択されるようです。外科的治療法も早期に効果が見られれば良いですが、少なからず筋肉や軟部組織を傷める可能性もあるのでよく検討してからにしましょう。
大事な事
思った以上に痛むこの石灰沈着性肩関節症、やはり早期に痛みから解放されたいと思いますが、1番のガスター錠を服用しながら保存療法を進めていくことが望ましいと考えます。長期に痛みが続き、やむを得ない時にだけ外科的療法を選択するようにしていただければと考えます。石灰(カルシウム)が沈着している事も知らずに薬物投与する事だけは避けたいところです。先にも述べましたが、肩関節の痛みでレントゲンを撮影し場合は必ず、『石灰(カルシウム)が沈着していないか?』質問しましょう。