投球障害肩(野球肩)とは?

投球障害肩(野球肩)というスポーツ障害は、野球の投球動作(ボールを投げる動作~投げ終わった後)において痛みを生じてしまう状態を指します。10代の学生から30~40代まで幅広い年代で発症し、初期は投球時のちょっとした痛みや違和感を感じる程度ですが、悪化してしまうと手術や最悪の場合は競技復帰を諦めなければいけないというケースもあります。

また投球障害肩(野球肩)はあくまでも総称であり、痛みの原因によって細かく症状名が分けられています。しかし肩関節の構造は複雑であり、痛みの原因が1つとは限らず色々な症状が組み合わさっていることが多いです。その為正確な診断名をつけることが難しく、結果的に総称として投球障害肩(野球肩)という名称が用いられています。

投球動作の解説(投球フェーズ)

 

まずは投球動作について説明したいと思います。野球における投球動作は大きく5つのフェーズに分けられ、それぞれ「ワインドアップ期②~③アーリーコッキングレイトコッキングアクセラレーション(加速期)フォロースルー」と呼ばれています。

この中でも特に肩・肘に負担がかかるのがアーリーコッキング・レイトコッキング、総じてコッキング期と呼ばれる動作です。アーリーコッキングにおいて肩関節は最大内旋位に、レイトコッキングにおいては最大外旋位となります。この際に肩関節に非常にストレスが加わる為、肩を痛めてしまうきっかけとなりやすい動作です。

投球障害肩(野球肩)の症状と分類

➊ インピンジメント症候群

インピンジメント症候群は投球障害肩(野球肩)の大半を占めておりますが、そもそもインピンジという言葉は「衝突」という意味を持っています。投球フェーズのレイトコッキングにおいて肩が外旋位から内旋位に切り替わるタイミングで上腕骨頭と肩峰がぶつかってしまうこと、その間に介在する腱や滑液包などの軟部組織が挟みこまれることで痛みを生じさせるのです。また痛み以外にも肩をまっすぐ挙げた際に肩のつまり感を訴える方も多く見られます。

❷ 腱板損傷

腱板(回旋筋腱板・ローテーターカフ)とは一般的に肩のインナーマッスルと呼ばれるもので、棘上筋棘下筋小円筋肩甲下筋の4つの筋肉の腱によって構成されています。作用としては肩関節の動きの補助や、上腕骨頭を関節窩に引きつけて肩関節を安定させる役割を持ちます。腱板損傷とはその腱板に対して繰り返しストレスが加わったり、上記のインピンジメントによって挟みこまれてしまうことで腱板が損傷してしまった状態です。腱板損傷の中でも棘上筋腱の損傷が1番多いと言われています。

❸ リトルリーガーズショルダー(上腕骨骨端線離開)

リトルリーガーズショルダー(上腕骨骨端線離開)は15歳以下の成長期に起こる肩の痛みです。成長期の子どもの骨は大人の骨と違い、骨の末端に骨端線(成長軟骨)という構造・組織が存在します。骨端線は普通の骨に比べると柔らかく、アーリーコッキング~アクセラレーションにかけての捻る力・遠心力が繰り返し加わることで損傷・離開してしまいます。

❹ SLAP損傷(関節唇損傷)

SLAP損傷とは関節唇と呼ばれる関節窩を縁取るように付着している軟骨組織が、上腕二頭筋という筋肉の作用によって剥離・断裂してしまった状態です。上腕二頭筋はアクセラレーション(加速期)~フォロースルーにかけて強く働く為、肩関節は元々関節の適合性があまり良くはなく、関節唇は肩関節の適合性・安定性を高める役割があります。その為、SLAP損傷(関節唇損傷)を引き起こしてしまうと二次的に肩関節の動揺性を増加させ、痛みの他にも肩の不安定感や引っかかりを生じさせてしまいます。

❺ 肩峰下滑液包炎

滑液包とは関節内を満たしている滑液という液体を蓄えている袋状の組織です。滑液は関節の動きを滑らかにするだけではなく、関節内の組織へ栄養を供給したり関節への衝撃を分散する役割を持ちます。肩にも肩峰の下に肩峰下滑液包という滑液包が存在していますが、インピンジメント症候群などによって挟みこまれてしまうことで炎症が起きてしまうのが肩峰下滑液包炎です。肩峰下滑液包炎は単体での発症は少なく、大概のケースはインピンジメント症候群など他の肩関節の疾患と併発していることが多くみられます。

❻ 上腕二頭筋長頭腱炎

SLAP損傷で説明した通り、上腕二頭筋は投球動作におけるアクセラレーション~フォロースルー期において強く働きストレスが加わります。上腕二頭筋には長頭腱・短頭腱の2つの腱があり、長頭腱は結節間溝と呼ばれる溝を走行していますが、投球動作によって繰り返し摩擦力が加わることで炎症を引き起こし痛みを生じるのです。野球以外でもバレーボール・テニス・水泳などオーバーヘッドスポーツと呼ばれるスポーツに好発します。

投球障害肩(野球肩)の原因

☑ 柔軟性・可動域の欠如

☑ 肩に負担のかかるフォーム

☑ オーバーユース(使い過ぎ)

投球障害肩(野球肩)に原因としては上記の3つのポイントが挙げられます。柔軟性と可動域に関しては肩関節のみではなく、肩甲骨・背骨・骨盤・股関節の柔軟性と可動域も重要です。理想的な投球動作は下半身で蓄えたエネルギーを上半身、肩、腕、指先、ボールへ効率よく伝達する必要があります。しかしその過程で上手く動かない部分があれば当然その部分より先の部分への負担が増加してしまうことで、何かしらの障害を引き起こしてしまうのです。

【肘が下がってしまう投げ方】

肩に負担のかかってしまう投げ方として真っ先に挙げられるのが、ボールをリリースする際に肘が下がってしまう投げ方です。本来肩に負担のかからない投げ方としては、リリースの際にボールを持っている側の肘・肩と対側の肩が一直線上になるのが理想です(サイドスロー・アンダースローでも同じ)。肘が下がりこの一直線が崩れてしまうと肩の外旋という動きが制限されてしまい、アーリーコッキングからレイトコッキングにかけて肩への負荷が大きくなります。

この動作を行うには「ゼロポジション」という状態が非常に重要となります。ゼロポジションとは肩甲骨の肩甲棘に対して上腕骨が平行になった状態のことを言い、この状態だと肩の軟部組織(筋肉・靭帯など)がニュートラルになり肩にかかる負担が少なくなります。

一般的な治療法

➊ 保存療法

  • 湿布
  • ストレッチ
  • アイシング
  • 温熱療法
  • 電気治療
  • 運動療法などのリハビリテーション

❷ 手術療法

3ヵ月程の保存療法で全く症状が改善しない場合は手術療法を行う場合もあります。近年は傷口も小さく患者様への負担が少ない関節鏡視下術が普及し、術後のリハビリもスムーズに行われているようです。

当院での治療法

➊ 姿勢・可動域のチェック

肩のみではなく姿勢と全身の可動域をチェックし、投球動作においてエネルギーの伝達を妨げている部分がないかを確認していきます。また前述の通り、肩関節が正しく動くために必要な肩甲骨・背骨・骨盤・股関節の状態もより詳細に確認をしていきます。

基本的には手技療法(KYテクニック・仙腸関節調整・カイロプラクティックなど)を用いて問題のある部分に対してアプローチしていきます。

❷ トリガーポイント

トリガーポイントとは筋肉を酷使したり繰り返し負荷が加わることで、局所的に血行不良や酸素欠乏を引き起こし形成される過刺激性のポイントです。トリガーポイントの特徴として少し離れた場所に痛みを生じることがあるため、他の疾患と間違われてしまうことがあります。実際に腱板損傷という診断を受けた選手の痛み原因が小円筋のトリガーポイントだったという症例もありました。

❸ 筋膜リリース

症状によっては軟部組織(筋肉・腱・靭帯・関節包)が癒着しているケースが見られます。癒着が起こっている組織は上手く伸び縮みすることが出来ず、可動域の低下や周囲の組織への負担の増加を引き起こします。

当院では「ファズブレード」という医療用ステンレス製の器具を用いて組織の癒着を取り除いていきます。

【参考】筋膜リリース治療とは?

❹ 特殊治療器/立体動態波/3D微弱電流/超音波/ハイボルテージ

関東では当院しか置いていない特殊治療器AAPは痛みの抑制と共に、傷ついている細胞の修復を促進します。また立体動態波/3D微弱電流/超音波/ハイボルテージは日本のオリンピック選手団も使用しているもので、それぞれを組み合わせたコンビネーション治療により、さらに高い効果を得ることが出来ます。

【参考】定電流治療器AAPとは

❺ 投球フォーム改善

投球動作または身体の使い方に問題がある場合は、野球経験のあるスタッフが直接指導致します。またご自宅でも実施可能なトレーニングやケア方法などの個別プログラムを作成し、日常的に身体の使い方がしっかりと定着する環境を設けます。

投球障害肩(野球肩)の予防・ケア方法

投球障害肩(野球肩)に対する予防・ケア方法の一部を紹介しますので、練習の前後や日常的に取り入れて見て下さい。

➊ 腹直筋ストレッチ

❷ 上腕三頭筋/広背筋ストレッチ

❸ 大胸筋ストレッチ

❹ 上腕二頭筋ストレッチ

❺ 背骨体操

※あくまでも予防のためのものですので既に痛みがある場合は早めの治療をお勧め致します。

野球肩で悩んでいる、投げる動作で肩が痛いとお悩みの方は、横浜駅徒歩12分『なる.整骨院』へご相談下さい。